Dirty Loops、21世紀の音楽


DIRTY LOOPS - Hit Me - YouTube

まずはこの動画を見てほしい。格好良いと思ったなら、すぐにアルバムを買ってもかまわない。下の方にはAmazonのリンクもつけておいた。

あなたは、Dirty Loopsというバンドを知っているだろうか。

彼らはスウェーデン出身の三人組で、レディー・ガガなどの有名アーティストの曲をカバーしYouTubeにアップするというスタイルで総計2000万に届こうかという再生数を叩き出し有名となった。

その後名プロデューサーデイヴィッド・フォスターに見初められ、2013年にシングル『Hit Me』でデビュー。2014年にはアルバム『Loopified(日本版:ダーティ・ループス)』をリリースし、Arctic Monkeys以来のオリコンチャートTOP10入りを果たした。

Dirty Loopsの特徴は、ジャズ・フュージョンを始めとする様々な音楽ジャンルの要素を総合してポップスへと昇華させているところにある。

簡単に言えば、「ただ聴くだけでも、難しく味わってみてもサイコーに格好良い」ということだ。以下、Dirty Loopsの来歴とその魅力を紹介していく。

ダーティ・ループス (通常盤)

ダーティ・ループス (通常盤)

 

 1.Dirty Loopsとは?

「初めて三人でプレイした時からこういう音だったから、全てはすごく自然だった」*1と語るのは、Dirty Loopsのベース担当であるヘンリックだ。彼がボーカルジョナドラムスアーロンと出会ったのは2009年、三人がスウェーデン王立音楽アカデミーの学生だった時だ。

そう、彼らはスウェーデン最高の音楽教育を受けた正真正銘のプロフェッショナル集団なのだ。こんなにも親しみやすくクールな音楽をやっているのに、だ。

ジョナは1歳の時から教会の聖歌隊で歌っており、11歳でショパンに魅了されピアノを始める。アーロンは音楽一家に生まれ、15歳の時にストックホルムのほとんどの音楽学校のオーディションを受けその全てで最高得点を叩きだした。ヘンリックも4歳の時からピアノを始め、後にベースに辿り着き16歳で既にセッションワークを行っていた。*2

豊かな音楽的バックボーンも、彼らの魅力の一つである。

2.カバーという手法

カバー、というのは彼らの音楽を貫く柱に他ならない。しかしメジャーデビューに際して、彼らはカバーからオリジナルへと移行する必要があった。

「カバーからオリジナルへの移行は、非常に時間がかかるプロセスだったよ」*3

とジョナが述べているとおり、その道程は簡単なものではなかっただろう。

彼らが最終的に行き着いたのは、「キャッチーなポップソングを作曲し、完膚なきまでにアレンジする」という手法だった。

まずシンプルかつ格好良い曲を作り、そこにエレクトロニックな手法やオーケストラ、ホーンの演奏を足し、要素を絞りこむのではなく思い切って足すことにより彼ららしいリッチな曲を作り上げていく。

この手法はいつしか関係者の間で"Loopify"=Loop化すると呼ばれるようになり、彼らの1stアルバムのタイトルにもなった。

 

3.ポップさと奥深さ


Dirty Loops - Wake Me Up - YouTube

ここでもう一つ彼らの動画を載せておこう。最初に紹介した曲とは雰囲気がかなり違っていることに気づくだろう。

彼らの曲は、外面は単なるポップソングにしか見えない物が多い。歌詞もあえて軽い内容に徹しており、重厚な音楽が好きな人は敬遠してしまうかもしれない。

しかし少し掘り下げてみれば、彼らの音楽がそんな軽薄なものではないことはすぐ分かる。キーが高くソウルフルなジョナの声、6弦ベースを駆りながらも決してテクニックに偏らないヘンリックのプレイ、TOTOジェフ・ポーカロを尊敬すると公言するアーロンのグルーヴィーなドラムは、どれをとっても"単なるポップソング"とはとても言えないような演奏を可能にしている。

ここでは曲ごとに掘り下げることはしないが、ジャズ・ファンク・ソウル・EDM、またアコースティックさやレトロさ、一方ではストリングスやビッグバンドの壮大さなど、あらゆる音楽を渡り歩くその様は、各音楽ジャンルの混合が亢進した結果としての、まさに21世紀の音楽と言って良いのではないだろうか。

 

4.参考

ダーティ・ループス | Dirty Loops - UNIVERSAL MUSIC JAPAN

Dirty Loops - YouTube

*1:ダーティ・ループス』ライナーノーツより

*2:http://www.universal-music.co.jp/dirty-loops/news/profile/

*3:ライナーノーツより